プロパンガスと都市ガスの違いを調べると、大して変わりない同じガスという認識が多い中で実は全く違う性質を持っています。
ガス代の料金比較はもちろん大事になりますが、プロパンガスから都市ガスに変更しようと思っても導入費用が高かったり、賃貸の場合には大家さんの許可をもらう必要もあります。
まずはプロパンガスと都市ガスの違いを知った上で、あなたの家のガス料金を見直すために何が必要なのか検討しましょう。
プロパンガスと都市ガスの違いは
プロパンガスと都市ガスの違いは使用料金に限らず、主成分や熱量、供給方法、そして災害時の復旧にかかる日数など、思った以上に異なる点があります。
プロパンガス | 都市ガス | |
---|---|---|
使用料金 | 高い | 低い |
料金の形態 | 自由料金 | 公共料金 |
主成分 | プロパン、ブタン(液化石油ガス) | メタンが主原料(天然ガス) |
供給方法 | 液体ガスボンベを各家庭に設置 | 埋設配管で各家庭に接続 |
ガスの比重 | 空気より重い | 空気より軽い |
ガスの熱量 | 24,000kcal/1㎥ | 10,750kcal/1m3 |
二酸化炭素排出量 | 少ない | 少ない |
災害時の復旧 | 3日~1週間程度 | 1~2ヶ月程度 |
事故発生件数 | 少ない | 多い |
導入初期費用 | 無償貸与(一括負担なし) | 距離によって約10~30万円 |
プロパンガスと都市ガスの使用料金と形態&供給方法
プロパンガスと都市ガスの使用料金を比較すると、都市ガスはプロパンガスに比べて一般的に3分の1程度安くなります。
都市ガスがプロパンガスよりも安い使用料になる理由は下記の2つです。
[box class=”yellow_box” title=”都市ガスの方が安くなる理由は2つ”]
- 都市ガスは公共料金でプロパンガスは自由料金
- 都市ガスは埋設管によりガスを供給するため人件費が少ない
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プロパンガスと都市ガスの料金と形態
都市ガスは2017年4月から都市ガス料金も自由化になりましたが、公共料金であるため使用料については規制料金という枠の中で各都市ガス会社が供給していました。
一方プロパンガスは公共料金ではなく自由料金で、原油価格の高騰があればすぐにプロパンガスの料金を上げることが出来ます。
またプロパンガスの価格には公表の義務がないため、適正価格よりも高い価格設定であったとしても私たち消費者は気付きにくいことから、家庭によりプロパンガスの料金に差があることも事実です。
都市ガスよりもプロパンガスを使用している家庭の場合、プロパンガスの契約会社を見直すだけでガス代が10%以上も安くなることがあります。
プロパンガスと都市ガスの供給方法
都市ガスは埋められたガス管を通して各家庭にガスを供給していますが、プロパンガスの場合には液体ガスを入れたボンベを各家庭に設置してガスを供給しています。
プロパンガスのボンベには一定量の液体ガスしか入らないため、プロパンガス会社は定期的に契約している家庭をまわり、プロパンガスボンベを交換する必要があるので、当然ですが都市ガスに比べて人件費が多くかかります。
ガス料金だけで比較すると、プロパンガスよりも都市ガスが良いと思われますが、都市ガスの埋設管は首都圏や関西圏の人口密集地にしか通っていませんので、都市ガスを利用できる家庭は日本の人口の約半分ほどになります。
プロパンガスと都市ガスの主成分と比重や熱量
プロパンガスと都市ガスの違いはどちらもガスコンロで火が付くので同じものだと考えがちですが、主成分や比重、熱量も異なります。
プロパンガスと都市ガスの主成分と比重は
プロパンガスの主成分は「プロパン」「ブタン」というガスで液化石油ガスとなり、都市ガスの主成分は「メタン」で天然ガスが主原料となり、比較すると全く違った性質を持っています。
プロパンガスの主成分である液化石油ガスの重さ(比重)は空気よりも重く、プロパンガスが室内に漏れた時は床の方からガスが溜まっていきます。
都市ガスの主成分である天然ガスの重さ(比重)は空気よりも軽く、都市ガスが室内で漏れた時は天井の方からガスが溜まっていきます。
あなたの家のガスが「プロパンガス」であればガス漏れ警報器は床に違い部分にあるはずで、「都市ガス」であれば天井にガス漏れ警報器が設置されているはずです。
ガス漏れ警報器の位置を確認して、もし警報器の設置場所がガスの比重と違っている場合には、すぐに契約しているガス会社または大家さんに連絡して、設置場所を変更してもらいましょう。
プロパンガスと都市ガスの熱量も違う
プロパンガスと都市ガスの主成分が異なれば、ガスの熱量(燃焼カロリー)にも差が出てくるのは当然のことです。
プロパンガスと都市ガスの熱量を比較した場合、都市ガスの燃焼カロリーは10,750kcal/㎥ですが、プロパンガスの燃焼カロリーは24,000 kcal/㎥となり、都市ガスとプロパンガスを比較すると約2.3倍ほどプロパンガスの燃焼カロリーが高くなっています。
燃焼カロリーが強ければガスの火力も強くなりますので、強力な火力を必要とする中華料理やラーメン店などの飲食店、また火力が必要になる製造工場などでは、都市ガスよりもプロパンガスを利用していることが多くなります。
プロパンガスの熱量は都市ガスの2.3倍ほど強いので、お湯を沸かしたりお風呂を沸かす場合などは都市ガスよりも早くなります。
プロパンガスの使用料を計算する場合はプロパンガスの単価が高いと思っても、都市ガスの単価に2.3倍を掛けたものが正確な熱量になるのを覚えておいてください。
プロパンガスと都市ガスの災害時復旧と事故件数
次にプロパンガスと都市ガスの安全性や災害時の復旧の速さなどを比較してみます。
プロパンガスと都市ガスの災害時復旧の速さ
近年、日本全国で大きな地震や津波の被害、台風や大雨による災害などが増え、私たちのライフラインが寸断されてしまう事も多いと感じます。
プロパンガスや都市ガスの場合、自然災害などでガスの供給が遮断されてしまうのは都市ガスの方が圧倒的に多く、各家庭の屋外に設置するプロパンガスはガスポンべから室内までの配管に問題が無ければ影響を受けません。
仮に自然災害によりプロパンガスの設備や配管に問題が起きたとしても、被害を受けた場所の特定が早く、修繕箇所も多くは無いため、復旧までのスピードは数日くらいです。
逆に都市ガスの場合、道路に埋設されている配管が破損した場合、被害状況を特定するのが難しく、埋設されている距離も長いため、復旧までの時間はかなり長くなることが予想されます。
プロパンガスと都市ガスのガス事故発生件数
プロパンガスと都市ガスの安全性を比較した場合、あなたのイメージでは自宅の屋外にむき出しに設置されているプロパンガスよりも地中の配管を通って自宅に引き込まれる都市ガスの方が事故は少ない印象があるのではないでしょうか?
プロパンガス | 都市ガス | 合計 | |
---|---|---|---|
平成25年 | 313件 | 451件 | 764件 |
平成26年 | 358件 | 444件 | 802件 |
平成27年 | 309件 | 383件 | 692件 |
平成28年 | 372件 | 442件 | 814件 |
平成29年 | 318件 | 397件 | 715件 |
上記の表は総務省消防庁が発表している「平成29年中の都市ガス、液化石油ガス及び毒劇物等による事故状況について」に記載されている、過去5年間の都市ガス及びプロパンガスの漏えい事故、または爆発・火災事故のうち消防機関が出場したものの件数を表にまとめたものです。
データを見るとプロパンガスよりも都市ガスの方が、ガスの漏えい、爆発、火災事故が多くなっていますが、プロパンガスの方が安全機器が普及しているので事故を未然に防ぎ、事故発生件数も少なくなっています。
プロパンガスを扱う業界では、国内で安全性を強化するために昭和61年以降から多額の費用をかけて「マイコンメーター」「警報器」「ヒューズコック」などの安全機器の取り付けをするようになり、ガス漏れの場合でも警報器でガス漏れを連絡して、屋外に設置しているメーターやヒューズコックが自動でガスの供給を止めます。
一方で都市ガスの場合、自宅に設置されているメーターや配管にガス漏れなどの問題があれば対応できますが、道路の下に埋められたガス管からガス漏れなどがあると場所の特定も難しく、大きなガス事故にも繋がります。
都市ガスの場合、ガス管が埋設されている距離も長いため、ガス漏れの特定や発見、工事で修繕するにも多くの時間と労力が必要です。
プロパンガスと都市ガスの導入初期費用
一戸建てやアパートを新築した場合、プロパンガスと都市ガスが選べる地域では導入費用にも料金の差があります。
またプロパンガスから都市ガス、都市ガスからプロパンガスに変更する場合などにも、新たなガスを導入するための初期費用がかかります。
プロパンガスの導入初期費用
新築一戸建てやアパート・マンション、また都市ガスからプロパンガスへ変更する際の導入初期費用は、多くのプロパンガス会社は初期費用を無料で設置してくれます。
プロパンガスの場合は料金が自由料金になりますので、無料でガスを導入できても、月々で支払うプロパンガスの料金にも差がありますので、複数のプロパンガス会社へ見積もりを取ることをおすすめします。
悪質なプロパンガス会社は、導入にかかる初期費用を無料にする代わりに、月々のガスの使用料を高額に設定して利益を貪る場合もありますので、注意が必要です。
都市ガスの導入初期費用
都市ガスを利用する場合、導入にかかる初期費用はプロパンガスとは違い、高額になるケースが多々あります。
新築一戸建てやアパート・マンション、またプロパンガスから都市ガスへ変更する際の導入初期費用は、都市ガスを供給する配管工事に加え、都市ガス専用のガスコンロも必要になるため約10万円~20万円程度の費用が必要になります。
都市ガスが提供できる地位であっても、埋設されている都市ガスの配管までの距離が遠いと、新たな配管を引き込むことになるので初期費用でかかる料金も高くなります。
※都市ガスを提供する埋設配管は首都圏や関西圏など人口が多い地域に限られていますので、地方に住んでいる場合には都市ガスを利用することができない地域もあります。
賃貸物件に都市ガスでは無くプロパンガスが多い理由
賃貸物件の大家さんはアパートやマンションを建てた時に都市ガスとプロパンガスの初期費用を比較して、導入費用がかからないプロパンガス会社と契約をすることが多いのです。
そしてプロパンガス会社は、賃貸物件の入居者が支払うガス料金の設定を高くして、賃貸物件の導入にかかる初期費用を回収しているはずです。
賃貸物件のアパートやマンションの場合、建物全体でプロパンガス会社と契約されていることが多いので、ガス料金のプランは必ず入居前に確認しておくことが大切です。
プロパンガスから都市ガスに変更したくても、賃貸物件の場合には大家さんの許可や了承が無くては契約変更ができませんし、変更にかかる費用はどこまで負担するのかも問題になります。
もしすでにお住まいの賃貸物件でプロパンガスの料金が高いと感じるなら、入居者全体の組合などで意見を出し、大家さんに直接直談判することがベストな選択になるでしょう。
プロパンガスの会社によっては、同じ賃貸物件に住んでいても、プロパンガスの使用料金の設定が異なる場合もありますので、組合などが動かない場合には契約しているプロパンガス会社に交渉してみるのも一つの方法です。
プロパンガスと都市ガスの違いまとめ
プロパンガスと都市ガスの違いを詳しく説明してきましたが、思っていた以上にプロパンガスと都市ガスの違いを感じられたのではないでしょうか。
プロパンガスも都市ガスも契約しているガス会社を変更することが可能です。
ガスの使用量や料金プランに疑問を感じるなら、あなたがお住まいの地域でも他のガス会社の料金と比較することができます。
プロパンガスや都市ガスの料金を比較して、あなたの家のガス料金を見直し(再チェック)してみてください。